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   週刊ヤマケイ 2014/8/28    
    
        8/16飯豊連峰・梶川尾根 登山の悲しい結末   (週刊ヤマケイ 2014/8/28版より)

 8月14日〜16日に2泊3日で飯豊連峰を縦走した際、下山時に遭遇したとても悲しい遭難事故について報告します。
 今回の縦走の概要については読者レポートで報告しましたので割愛しますが、メンバーは私(57歳)と妻(54歳)のふたりです。私たちは2日目に宿泊した梅花皮小屋で兵庫からのご夫婦と仲良くなりました。ご主人は71歳、奥様は66歳とのことでした(新聞記事による)。最終日16日6時に、雨の中を兵庫からのご夫婦が私たちよりひと足早く出発され、10分後に私たちが出発しました。下山直前の最後の休憩ポイントで、奥様に「もうゴールの飯豊山荘が見えていますよ」と声をかけたところ、「見えてからが長いのよね」とのお答えでした。
 それが奥様との最後の会話になってしまいました。翌日のニュースで奥様が滑落し、亡くなられたことを知りました。
当日の梶川尾根について
 北俣岳から梶川尾根の標高差約1600m、7時間の行程は、我々中高年にとってはハードなコースですが、特に危険な箇所はなく普通の登山道と思えました。ただし最後の1時間ほどは急な下降で雨のため滑りやすく、左右両側の谷が深く切れ込んでいて「落ちたらかなりヤバイ」という下山路でした。
事前の兆候
 亡くなった奥様は最後の休憩ポイント後に何度も転倒してしまい、雨具はドロだらけでした。私もかなり足が弱ってきて踏ん張りがきかず、2度ほど転倒しました。もうこの時点で踏ん張りがきかないということが、滑落の前兆であったのではないでしょうか。
同行者の声が届き、見える範囲で
 梶川尾根のゴール直前、5mほどの鎖場で私たちが下りているところにご主人が下りてきました。
 私たちはそのまま通過しましたが、ご主人は奥様を待っていたご様子。
 私たちは13時30分に飯豊山荘まで無事下山し、温泉に入り休んでいたところ、ご主人が血相を変えて飛び込んできて「奥様とはぐれた」と仰ります。先の鎖場で奥様を待っていたが下りてこないので、登り返したが見つからなかったとのこと。
 私は直感的に左右どちらかの谷に滑落したのでは、と考え、警察への通報、救援要請を促しましたが、翌日のニュースによると奥様はその日は発見出来ず翌日にご遺体で見つかったそうです。
 遭難者の発見が翌日になってしまった原因は梶川尾根での滑落場所が特定できなかったためです。
 もし、奥様がご主人の直後を歩いていれば、御主人も異変で滑落場所を特定でき、捜索隊もその場所から懸垂下降し当日中に発見できたと思います。
 今回の事故で私が得た貴重な教訓は「常に同行者の声が届き、見える距離で歩く」ということでした。  (文=佐藤 淳/新潟県)

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